酒種元種を育てたり、酒種パンの生地を発酵させているときに、

「なんだかアルコールの匂いがするな…」

「これって普通のこと?それとも失敗なのかな?」

と心配になったことはありませんか?

特に自家製酵母である酒種は、その発酵過程で独特の香りを放ちます。

その中にアルコールの匂いを感じることは珍しくありません。

しかし、その匂いが「正常な発酵の証拠」なのか、

それとも「過発酵などの問題のサイン」なのか、気になりますよね。

今回の記事では、酒種パン(元種や生地)からアルコール臭がする「原因」を解説します。

正常な発酵で生じるアルコールと、問題がある場合の「見極め方」

気になるアルコール臭への「対処法」

について詳しくご紹介します。

この知識は、米粉を使った酒種パン(米粉酒種パン)にもそのまま応用できます。

アルコール臭を正しく理解して、美味しい酒種パン作りを楽しみましょう!

酒種パン(元種・生地)から「アルコール臭」がするのはなぜ?

酒種パンや酒種元種からアルコール臭がするのは、主に以下の理由からです。

酵母のアルコール発酵

パン作りに使う酵母は、糖分を分解して「アルコール(エタノール)」と「二酸化炭素ガス」を生成します。

この二酸化炭素ガスがパンを膨らませる役割を果たしますが、アルコールも同時に発生します。

これはパン酵母の正常な働きです。

酒種の特性

酒種は、お米、米麹、水を原料としています。

米麹が米のデンプンを糖分に分解し、その糖分を酵母が発酵させています。

酒(日本酒)造りの過程も同様にアルコール発酵を伴います。

「酒種」という名の通り、他の天然酵母(小麦など)に比べて、発酵中にアルコール成分がより生成されやすく、アルコールや酒粕のような香りが感じられやすいという特性があります。

つまり、酒種の発酵において、ほのかなアルコール臭がするのは、正常な発酵が進んでいる証拠の一つなのです。

そのアルコール臭、正常?「過発酵」の見極めサイン

正常な発酵で生じるアルコール臭と、問題がある場合(過発酵など)のアルコール臭は、その「強さ」や「質」、そして「他のサイン」で区別できます。

正常な発酵臭

甘くフルーティーな香り、または酒粕のような良い香りの奥に、ほのかにアルコールのニュアンスが感じられる程度です。

鼻につくような不快な香りではありません。

元種や生地の状態も、元気に膨らんでいたり、良い状態を保っていたりします。

強いアルコール臭(過発酵の可能性が高い)

ツンとする、鼻にくる、純粋なアルコールやシンナーのような刺激臭が強く感じられます。

元々の酒種の良い香りが薄れ、アルコール臭が優位になっている状態です。

過発酵の他のサインも伴っていることが多いです。

  • 元種や生地が一度大きく膨らんだ後にしぼんでいる
  • 元種や生地の表面に泡が立ちすぎている、またはドロドロになっている。
  • アルコール臭だけでなく、きつい酸っぱい匂いが加わっている(アルコールが酢酸菌で酢酸に変化している可能性)。
  • 生地に弾力がなく、押しても戻らない(過発酵で生地の力がなくなっている)。

もし、強いアルコール臭と共に上記の過発酵のサインが見られる場合は、発酵が進みすぎている、または微生物のバランスが崩れている可能性があります。

天然酵母や酒種の匂いトラブル全般(酸っぱい匂い、腐敗臭など)についてはこちらも参考に!

天然酵母の匂いを徹底解説!正常な香り、異常な匂い(酸っぱい・アルコール・腐敗)の原因と見分け方

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酒種元種の管理方法|種継ぎの頻度・量、冷蔵庫保存、失敗しないコツ

「アルコール臭」への対処法(元種・生地別)

アルコール臭が気になる場合、それが元種からなのか、生地からなのかによって対処法が変わります。

酒種元種が強くアルコール臭い場合(過発酵気味)

これは、元種中の糖分を酵母が食べ尽くし、過発酵が進んでいるサインです。

種継ぎのタイミングを見直す

これまでより少し早いタイミングで継ぎ足し(餌やり)を行いましょう。

元種が最も元気で膨らんでいるピーク、または少ししぼみ始めた頃に継ぎ足すのが理想です。

継ぎ足しの量を見直す

古い元種を少し多めに破棄して、新しい餌(米、米麹、水など)の比率を増やして継ぎ足すと、酵母の状態がリフレッシュされることがあります。

温度管理を見直す

発酵が進みすぎる場合は、普段より少し低い温度で元種を管理してみましょう。

酒種元種を「種継ぎしないとどうなる?」放置した場合の変化、復活・破棄の見分け方

パン生地が強くアルコール臭い場合(過発酵気味)

生地が過発酵して力がなくなり、アルコール臭が強くなっているサインです。

できるだけ早く焼成する!

生地がまだ少しでも膨らむ力がある場合は、たとえレシピで推奨されている発酵時間や膨らみに達していなくても、できるだけ早くオーブンに入れて焼成しましょう。

アルコールは焼成中にほとんど蒸発しますが、過発酵で風味が悪くなるのを少しでも抑えられます。

ひどく過発酵で生地がヘタっている場合

ドロドロになっていたり、全く膨らむ力がなくなっている場合は、残念ながらパンとして焼き上げるのは難しいかもしれません。

無理に焼いても美味しくない可能性が高いです。

配合を調整して蒸しパンにしてみる、または安全のため破棄を検討しましょう。

パン生地の過発酵についてはこちらも参考に!

パンが膨らまない原因と解決策【米粉パン特化】失敗する理由と膨らませる方法

米粉パンの発酵を見極める【失敗しない方法】

パンの焼き上がりと「アルコール臭」

焼成前の生地からアルコール臭がしていても、パンを焼く過程(焼成温度は約180℃以上)でアルコールはほとんど蒸発します。

そのため、焼きあがったパンがアルコール臭いということは基本的にはありません。

ただし、焼成前の生地のアルコール臭が強い過発酵によるものだった場合、焼きあがったパンに、過発酵独特の風味(酸味が強すぎる、少し苦いなど)が残ることがあります。

これはアルコールそのものの匂いではなく、過発酵によって生成された他の物質や、酵母の状態が悪くなったことによる風味の変化です。

「米粉酒種パン」の場合も同様です

この記事で解説した酒種パン(元種や生地)からアルコール臭がする原因や、正常・過発酵の見極め方、対処法は、米粉を使って作る酒種パン(米粉酒種パン)にもそのまま当てはまります。

米粉を使った生地でも、酒種元種の状態や生地の発酵状態によってアルコール臭が発生します。

米粉酒種パン作りでも、元種の適切な管理と生地の発酵状態の見極めが、美味しいパンを焼き上げる鍵となります。

米粉酒種パンのレシピはこちら!

米粉酒種パンレシピ:自家製酒種で作る簡単ふわもち天然酵母パン

「おうちで本格」酒種パンの基本レシピ:天然酵母の芳醇な香りを自宅で(米粉パン好きにも)

正しい発酵で、美味しい酒種パンの風味を!

酒種パンの美味しさは、適切な発酵によって引き出される豊かな風味にあります。

ほのかなアルコール臭は正常なサインですが、強いアルコール臭は過発酵のサインです。

酒種元種を元気に保ち、生地の発酵状態をよく観察しながら、レシピ通りの温度と時間で発酵させることで、美味しい酒種パンの良い香りと風味を楽しむことができます。

酒種パンの作り方(全体の工程)はこちら!

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自家製「酒種元種」の作り方:米麹とご飯で育てる伝統酵母【完全ガイド・失敗しないコツ】

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天然酵母「元種」の正しい管理・保存方法と継ぎ足し徹底ガイド【失敗しない育て方】

酒種パンのアルコール臭は、正しく理解して対処しよう

酒種パンや元種からアルコール臭がするのは、酵母の正常なアルコール発酵と酒種の特性によるものです。

ほのかな良い香りのアルコール臭は正常ですが、強く刺激的なアルコール臭は過発酵のサインである可能性が高いです。

過発酵の場合は、元種の管理方法を見直したり、生地の場合はできるだけ早く焼成したりといった対処が必要です。

焼成前の強いアルコール臭は、焼きあがりの風味に影響することもあります。

この記事の解説を参考に、酒種の発酵状態を正しく見極めて、美味しい酒種パン、そして米粉酒種パンを焼いてくださいね。